本研究は、近年急速に高精度化する放射線治療において、正確で安全な放射線治療の実現のために、非侵襲的な投与線量検証システムを開発することを目的としている。本年度の実施内容を以下に列挙する。(1)医療用直線加速器から出力される治療光子ビームを計算可能なシミュレーションシステムを構築した。このシステムでは、放射線の物理現象を忠実に再現できるモンテカルロ法を用いて治療ビームが計算可能なコードを開発した。治療に使用される直線加速器を用いて取得した吸収線量分布を計算線量分布の比較から、このシステムが実際の治療ビームを正確に再現していることを実証した。このシステムの開発によって、実験的に評価することが不可能である医療用直線加速器のエネルギースペクトルの評価が可能となった。これらの研究成果は国際学会にて報告した。(2)2次元光子強度分布測定に用いる間接変換型平面検出器(Electric Portal Imaging Device: EPID)の特性解析を行った。特性解析では、検出器応答の直線性や再現性、残像効果による応答変化を明らかにし、さらにモンテカルロ法による検出器のエネルギー特性を検討した。この結果、EPIDは光子エネルギーに依存して大きく検出器応答が変化することが明らかになり、正確な2次元光子強度分布測定のためには検出器のエネルギー依存性を考慮した強度分布再構成法の開発が必要であることが明らかになった。次年度以降、(1)で開発したシミュレーションシステムにより治療ビーム及び人体を透過したビームの特性解析を行い、この結果を基にして検出器のエネルギー依存性を考慮した強度分布再構成法を開発を行う。
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