研究概要 |
近年,肺悪性腫瘍に対する低侵襲性治療として凍結療法の報告がみられる.本提案では、肺腫瘍の凍結治療成績を向上するために豚肺を用いて,以下の検討を行った.【1】凍結治療の最適プロトコール(凍結/解凍を行う回数,時間)の検討:動物実験施設において豚を全身麻酔,人工呼吸器管理下に開胸した.熱電対4本を自作のアクリル板にて凍結端子に固定し,肺実質に刺入し凍結実験を行った.モバイルカメラとデジタルカメラにて凍結領域の広がりをモニターし,同時に熱電対にて凍結端子から4mm,6mm,8mm,10mmの部位の温度を連続して測定した.プロトコール1:凍結/解凍を3サイクル行い,それぞれの凍結は400秒,解凍は0℃までとした.プロトコール2:凍結/解凍を3サイクル行い,第1凍結は400秒,第2,3凍結は温度が一定になるまで,解凍はいずれも温度が一定になるまでとした.第1サイクルの解凍時には出血がみられた.いずれのプロトコールでも後半のサイクルで温度が下がる傾向にあり,特に第1と第2サイクルでは10mmの熱電対では有意に温度に差がみられた.またいずれのプロトコールでも後半のサイクルで凍結時に温度が急峻に低下した.プロトコール間の比較では,10mmにおける平均最低温度には有意差はみられなかったが,第2サイクルでの凍結時の温度低下はプロトコール2で急峻であった.凍結治療において凍結時に急激に温度低下を得る事が重要であり,この観点からは十分に解凍を行ったプロトコール2の方が有利である可能性がある.また明らかに第1と第2サイクルでは10mmの部位での温度変化に差があり,肺胞内出血などによる熱伝導効率に差がおこったと思われる.【2】治療時の適切な凍結マージンの検討.同日に豚を屠殺し,肺を摘出しホルマリン固定を行い病理標本を得た。現在、実験結果についてその詳細取りまとめを行っている。
|