本研究は、分子標的治療薬による胃癌細胞の放射線感受性に対する影響の解析を第一の目標としたものである。放射線照射・分子標的治療薬投与による遺伝子発現の変化を解析し、放射線感受性に関する遺伝子を同定し、放射線抵抗性のメカニズム解明や新たな治療法の開発を最終的な目標としている。 胃癌は長らく放射線抵抗性と考えられてきたが、切除可能胃癌患者における術前化学放射線療法の有効性が示され、現在では放射線治療は術後の補助療法としても期待されている。放射線治療の効果をあげる方法の1つとして増感剤の開発が待たれているが、最近、分子標的治療薬の中に放射線増感作用が期待できるものがあると報告された。そこで、胃癌に対する分子標的治療薬併用放射線治療の基礎的研究を着想するに至った。未だ、胃癌の分子標的治療薬併用放射線治療に関する基礎研究の報告は見られず、本研究は、今後の臨床応用の基礎となる重要な研究となりうると考えている。 初年度は、ある蛋白の発現量の多いことが既に知られている胃癌細胞NCI-N87と、少ないことが知られている胃癌細胞MKN-45について、放射線照射単独による影響の解析を試みた。具体的方法としては、前述の2種の細胞について、コロニー法により、放射線照射による生存曲線を作成しようとしている。再現性が高くなく、培地や照射方法などについての実験条件を選定中である。また、同時にPCR法、Western-blot法により、蛋白の発現量の多寡を解析中である。今後の予定としては、分子標的治療薬の有無による生存曲線の変化をコロニー法により解析し、さらにはマイクロアレイによる遺伝子発現の変化を調べていく予定である。
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