研究概要 |
1.研究計画に示された,選択基準を満たす患者対象群において,前年度に引き続き、計画通りのMRI撮像が行われた。また、初年度撮像した対象群のうち、13名程で、1年後の経過観察の撮像を行うことが可能であった。ただし,今回も撮像時の画質の劣化が数例で認められ,残りの期間においてさらなるデータの収集が必要であることが示された。 2.22年度終了の現時点で,比較的小人数のデータであるという限界はあるが,健常群および統合失調症の前駆状態,あるいは発症早期にあると思われる患者において,1年後の経過観察のMRIデータ取得が可能であったものうち、健常群と発症した群において、画像統計解析の手法で2つの点において有意な異常所見が見られた。すなわち、T1強調像による脳の容積測定では、発症群において、発症前と比して左嗅内野の容積の有意な減少が見られ、拡散テンソルによる白質トラクト解析では、発症群において、帯状東部でのFA値の低下が認められた。前者に関しては、2010年11月の国際早期精神病学会にて、また後者は2011年3月の欧州放射線学会にて発表を行った。 3.信頼性の向上のため、データが収集しえた患者群においても,さらに経時的変化を追跡することにより新たな知見も得られると思われ,今後積極的にデータ収集を行うべきと考察した.また,データベースはより多数のデータより構成された方が信頼性がより高いと思われ,特に比較対照として用いる健常群のMRIデータ収集に関して、その手法や撮像プロトコール等の検討を行った。また、このようなデータベース構築のための院内倫理委員会の許諾を得た。
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