研究概要 |
1.選択基準を満たす患者対象群において,前年度および前々年度に引き続き、計画に沿ったMRI撮像が行われた。ただし,今回も撮像時の画質の劣化(撮像時の被検者の体動等による)が数例で認められ,大規模な画像統計解析を念頭においた場合,データの収集数は若干不足していると推測される。 2.23年度終了の現時点で,健常群および統合失調症の前駆状態,あるいは発症早期にあると思われる患者において,1年後の経過観察のMRIデータ取得が可能であったものうち、健常群と発症した群において、画像統計解析の手法で前年度と異なる新たな有意な異常所見が見られた。すなわち、Tract-based spatial statisticsを用いた拡散テンソルによる大脳白質解析では、発症しなかった群においても、前頭葉白質等でのFA値の低下が認められた。この結果は,統合失調症の前駆状態において既に大脳白質のネットワークにおける何らかの脆弱性を示唆するものと考えられ,治療の早期介入の根拠となりうる重要な知見である 3.上記拡散テンソル解析による手法では,統合失調症の前駆状態,あるいは発症早期にあると思われる患者でその後発症した群としなかった群で有意差は見られなかった.少ない患者数が統計的検出力に影響しているとも考えられるが,従来のMRI撮像手法そのものの内包する技術的限界である可能性も鑑みて,近年提唱されている非ガウス分布解析を導入した拡散強調像(q-space imagingや拡散尖度画像等)の検討を,器質的疾患である脳梗塞群患者で試行した.その結果,これらの新手法を用いることで,従来の撮像法と比し新たな,かつ従来とは異なる脳実質の情報が得られることが示唆され,今後,本研究対象群にも応用することで,さらなる早期診断能の向上等臨床応用を視野においた場合でも,その結果の改善に寄与するものと確信できた.
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