4ヒドロキシノネナールは、難治性で組織沈着性の物質であり、過酸化反応による細胞毒性の発現や動脈硬化発症の機構解明の上から最も有力な酸化ストレスのマーカーの一つとして注目を集めている物質である。これに対し、まずヨード125にて放射性標識を行い、テトラクロラミン法を用いてトレーサの作成を行った。純度は95%以上で作成可能であった。次に、作成したトレーサの生体内分布をC57/BL6を用いて調べた。静注、1-3時間で大動脈への集積がピークとなった。また、大動脈/血液比、大動脈/筋肉比がそれぞれ0.47、13.0であった。血液、肺のバックグラウンドの低下と、大動脈への集積程度、トレーサの排泄を考慮すると、投与後3時間での評価が適当と考えられた。今後は、本トレーサを、自然発症動脈硬化マウスに投与し、大動脈への分布を通常のマウスと比較し、さらにその局在を通常のマウスと動脈硬化発症マウスで画像化して比較する。4HNEは、ヒト腹部大動脈硬化症病巣について免疫組織染色により局在が解析されているが、血管内腔に面した脆弱化した動脈硬化巣に集まる泡沫細胞に陽性であったことが確認されており、動脈硬化巣の破綻において重要な役割を担う泡沫細胞の形成に寄与することなどが報告されているため、生体内での4HNEの局在を知ることは、酸化ストレスの観点から動脈硬化発症および進展を知ることにつながるため、意義深いことと考えられる。
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