研究概要 |
近年高度なCT透視下穿刺が要求されその件数も増加している。術者被曝の増加が問題視されているが現状では防護シールドは使用されておらず、年間100件行うと放射線障害防止法による規定の線量限度500mSv/年を超える可能性がある。我々はCT透視で生じる散乱線量分布の解析に基づいた新しい形状の、またほとんどのCT透視装置に使用できる汎用性のある防護シールドを制作した。また、これを用いて手技に伴う散乱線の分布を計測し、その有効性を検討した。 今年度は防護シールドを制作し、これを用いて線量の計測を行った。胸部肺生検と同条件のCT透視を1分間行い、デジタル線量計を実際の手技における術者の手の位置に設置して計測した。シールドなしでは線量は9,999μSvを超える値であったが防護シールドを用いれば273μSvまで低減できた。 防護シールドにより大幅に被曝量は低減したが予想よりも術者の受ける線量が多かった。これは透視野を挟んで患者の頭側からの散乱線が原因であると考え、透視野の頭側にも新たなシールドを設置し再度計測を行った。 デジタル線量計をCTの断層面より3cm・5cmの位置と術者ファントムの胸部・腹部に設置した。異なる条件下(寝台・胸部ファントム・シールド設置の有無)で1分間のCT透視時の被爆量を計測した。 頭側のシールドを追加した場合の被曝量はCTの断層面より5cmの位置では1810μSv、術者ファントムの胸部・腹部の位置ではそれぞれ30μSv、72μSvであった。頭側のシールドを設置しなかった場合の被曝量はそれぞれ1780μSv、34μSv、77μSvであり両者に差はなく、患者の頭側からの散乱線はほとんどないと考えられた。しかし、CTの断層面に何も置かない条件でも散乱線が計測され、CT装置からも散乱線が発生しているものと考えられた。
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