研究概要 |
CT透視下穿刺では術者の被曝量が大きく、年間100件で線量限度500mSv/年を超える可能性がある。しかし現状では防護シールドが使用されておらず、我々はCTに使用できる防護シールドを制作した。また、これを用いて手技に伴う散乱線の分布を計測しその有効性を検討した。 [研究内容] 今年度は昨年度に作製したシールドを用いてさらに詳細な線量の計測を行った。シールドはアクリル板に鉛シートを貼り付けた半筒形で患者を覆うように寝台上に設置する。胸部肺生検と同条件のCT透視を1分間行い、TLD装置(UD-512P,Panasonic)、ペン型電離箱を用いてCT断面から一定の距離における被曝量を測定した。それぞれの位置において異なる条件下(シールド設置の有無)で測定を行った。TLD素子(UD-170A、蛍光体;BeO),電離箱はシールドの上に設置し、CT断面より4cm-27cmまでの距離では寝台の頭尾方向に1cm毎、32cm-42cmまでは5cm毎の位置で線量を計測した。TLD素子は術者の指の被曝を想定してアクリルで作製した指ファントムに貼り付けた。また術者の胸部の位置を想定してCT透視下穿刺を行う際に術者が立つ位置に三脚を設置し、床から130cm、CT断面よりそれぞれ40,50,60cmの位置にTLD素子,電離箱を置いて測定を行った。 CT断面より4cmの位置ではTLDによる測定値はシールド設置時で15.2mSv、シールドなしで19.2mSvであった。42cmの位置ではシールド設置時17μSv、シールドなしで1.34mSvであった。 [研究の意義・重要性] TLD、電離箱のいずれの計測においてもシールドを用いることにより被曝量は大きく減少した。適切な防護シールドを用いることで術者の安全が確保され、より多くの手技を行うことが可能になると考えられる。また、CT断面からの距離が大きくなるとシールドの有無による被曝量の差が増大した。CT透視使用時は術者がCT断面から出来るだけ距離をとることで、防護シールドの効果がより大きく得られると考えられた。
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