研究概要 |
悪性腫瘍の椎体転移による激しい疼痛に対する治療として、放射線治療の有効率は59~81%、経皮的椎体形成術の有効率は60~85%と報告されている(1-4,6,7,9)。治療無効例のQOLを向上させるためには追加治療を検討することが求められるが、経皮的椎体形成術で病巣内に注入する骨セメントにはX線不透過のバリウムが含有されており、放射線照射時の線量分布に歪みを発生させる危険性がある。 病巣内部に骨セメントが注入された後の放射線治療の適応については、骨セメントが線量分布に及ぼす影響の基礎データが存在しない。複雑な照射法を適応させるには高レベルの精度管理が要求され、骨セメントが線量分布に及ぼす影響を明らかにすることが必要である。 本研究は、病巣内部の骨セメントが線量分布に及ぼす影響を基礎ファントム実験で測定し、経皮的椎体形成術と放射線治療との併用療法を可能とする。 本年度の研究において、放射線照射時の骨セメントがおよぼす線量分布の歪みについて、初期結果を得ることができた。現在、本結果を取りまとめて英文学術雑誌に投稿中である。 経皮的椎体形成術と放射線治療を併用するための基礎的データとして、骨セメントが線量分布に与える影響および骨セメント含有病巣に対する最適放射線治療条件を決定する事ができる。この結果を基にして、椎体転移による激しい疼痛の集学的治療として経皮的椎体形成術と放射線治療の併用療法が可能となり、疼痛緩和治療のイノベーションが創出される。
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