体内投与した放射性薬剤の放射能分布を画像化することができる陽電子断層撮影(PET)は、適した放射性薬剤を用いることにより臨床診断に貢献しているが、空間分解能が約6mmであるため、体内の構造がぼやけ画素値の定量性が失われる部分容積効果が観察される。この空間分解能を補うために、近年、MRIやCTといった他モダリティーとPET画像を重ねて表示する診断が主流になってきている。本研究は、PET脳神経受容体機能の臨床診断において、形態異常部位、形態異常はないが機能異常がみられる部位などを今まで以上に的確に診断するために、MRIによる解剖情報を積極的に導入し様々な脳機能(血流、糖代謝、受容体結合能など)を高精度に画像化することを目指している。 本年度は、MRI画像の形態情報を用いてPET画像特性を向上させるためシステムの評価を行った。特に、ドーパミンD_2受容体機能イメージングに用いられる[^<11>C]racloprideを用いたヒトPET検査において、定量精度をどれくらい改善するのか、15名のヒトの脳を模したファントムに対し、[^<11>C]racloprideのPET測定を模したモンテカルロシミュレーションデータを用いて調べた。その結果、脳を解剖学的に区画した85領域において15名のファントム全てにおいて定量性の改善が見られた。この研究成果に関連して、現在Physics in Medicine and Biologyに論文投稿中である。また、本手法をてんかんの患者のオピオイド受容体PET画像に応用し病変検出の精度が改善された内容が、共同研究者のColm McGinnity氏(Imperial College London)によって、9th EUROPEAN CONGRESS ON EPILEPTOLOGY(2010年6月)にて発表され、現在論文準備中である。
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