今まで分子プローブとして評価されていないイミダゾリン受容体サブタイプの分子プローブ開発を行うことを目的として本研究を行った。分子イメージングの主要なツールであるポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いたイミダゾリン受容体の画像化及び機能の解明を目指し、はじめにPET用核種の標識が可能なイミダゾリンI_2受容体選択的リガンドFTIMDを探索し、その化合物をPET用核種である^(11)Cで標識した[^(11)C]FTIMDを開発した。[^(11)C]FTIMDは、注射剤として適した放射能量、高い比放射能、高い純度で合成することができた。ラットによるインビボ実験では、[^(11)C]FTIMDは脳への移行性が高く、イミダゾリンI_2受容体選択的リガンド負荷によりイミダゾリンI_2受容体の特異的結合を示した。また、脳では放射性代謝物が確認されず、放射能集積そのものがプローブを反映していることが分かった。[^(11)C]FTIMDを用いたラット脳PET測定では、脳内放射能分布はイミダゾリンI_2受容体濃度の高い部位に集積が見られ、定量的動態解析によりイミダゾリンI_2受容体選択的リガンド負荷実験と比較すると特異的結合がイミダゾリンI_2受容体濃度を反映した結果を示した。よって、[^(11)C]FTIMDはイミダゾリンI_2受容体濃度を反映した優れたPET用プローブであることが分かった。イミダゾリンI_2受容体は精神疾患や神経変性疾患に関連があるため、[^(11)C]FTIMDを用いたPET測定により、これらの疾患を診断する新しい分子プローブとしての可能性が期待できる。さらに、[^(11)C]FTIMDによるインビボ評価により、機能がほとんど分かっていないイミダゾリン受容体の機能解明の促進となることが期待できる。
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