MOSFET検出器による陽子線の線量測定において、MOSFET検出器はLET依存性を有する。それゆえ、in-vivo dosimetryを実施するためには、感度劣化が大きな問題であり、MOSFET検出器をそのまま利用することは難しい。 そこで今回、190MeVの陽子線を用いて、MOSFET検出器(TN-252RD)と電離箱によりブラッグカーブを測定し、電離箱に対するMOSFET検出器の感度補正量を深さの関数として求め、この補正関数を組み込んだペンシルビーム線量計算法を用いて、測定点における感度補正量を算出し、得られた感度補正量を測定値に乗じることで、MOSFET検出器による測定線量値を算出する方法を開発した。開発した感度補正法を検証するために、モノエネルギービームを使って、L型ボーラス通過後の陽子線線量分布測定を実施した。L型ボーラスでは、厚いボーラスを通過した陽子線と薄いボーラスを通過した陽子線により、様々な飛程を有した陽子線が混じり合って、線量分布を形成しており、その様子が測定位置に依存した感度劣化量の違いとなって現れていることがわかった。すなわち、測定位置により複雑に感度変化しているので、測定位置に応じて感度補正量を算出する必要がある。 結果として、MOSFET検出器により得られた線量値は、測定位置により複雑に感度変化しているが、それにも関わらず、感度補正されたMSOFET線量値は、電離箱による測定値と3%程度の誤差で良く一致し、正確に補正されていることが明らかになった。以上より、本手法を用いることで、MOSFET検出器による陽子線に対するin-vivo dosimetryが実現できることを実証できた。さらに、ホットスポットやコールドスポットが形成される不均質媒質中でも正確な感度補正ができる手法へと開発を進め、高精度in-vivo dosimetryの実現を目指す。
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