平成21年度は研究実践計画に従い、はじめに散乱ファントムを用いて、シールドありなしの場合の散乱フラクションを測定した。このシールドは心筋血流定量検査において視野外放射能の影響(特に肝臓からの寄与)を減らすためのものである。シールドの導入で、偶発同時計数の減少は明らかだが、シールドと散乱して散乱同時計数が増加することが考えられる。しかし実験の結果、シールドありなしでほぼ同じ散乱フラクション(48%)が得られた。よってシールドは散乱フラクションを上げずに偶発および散乱同時計数を減らすことが期待できるが、臨床検査においては、シールドの設置は技師への負担等の観点から好ましくない。そこで視野外放射能の影響が定量値に影響を与えるかをシミュレーションによって検討した。まずシミュレーションの妥当性を示す必要があるが、これは散乱フラクションの実験との比較で確認した。ここでは、特に視野外の影響を再現するためには、シミュレーションにおいて、セプタやロッドソース等視野外の構造物も考慮しないと実験を再現しないという新しい知見が得られた。シミュレーションの再現性を確認したのち、情報通信研究機構が開発した数値人体モデルを用いて、非常にリアルな系で0-15の心筋血流定量検査の詳細なシミュレーションを行った。この結果、視野外放射能の影響で5%ほど関心領域の定量値を過大評価する傾向があるが、0-15における血流量は、洗い出しから求められること、この過大評価が心臓領域で一様であったこと、から血流量等の定量値にはほとんど影響がないことが分かった。よって今後はシールドよる偶発同時計数の低減によってどのくらい画質が改善されるかをシミュレーション等で検討したのち、ボランティアによる2D収集、3D収集による心筋血流検査を行い、3D収集のような視野外放射能の影響がある場合でも、正確な定量値が得られることを確認する予定である。
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