平成22年度は主として、シミュレーションによるO-15標識水心筋血流定量PET検査における、視野外放射能の影響を調べた。シミュレーションの妥当性は、散乱ファントムによる散乱フラクションの実験値とシミュレーションの比較によって、昨年度の研究で示した。心臓をPETの視野中心に合わせた場合、肺や肝臓等の心臓と隣接している臓器が高い集積を持ちようになり、さらにそれらの大部分は視野外にある。これらの放射能起源による散乱や偶発同時計数は心筋血流量の定量値に影響があると考えられている。この影響をシミュレーションによって調べた。非常にリアルな系でシミュレーションするために、情報通信研究機構が開発した数値人体モデルをシミュレーションコードGeant4に導入した。その人体モデルにある検査から予測される各臓器の放射能を与え、シミュレーションによる画像を作成した。血流量は心筋の放射能濃度の変化から計算されるが、シミュレーションにおいても検査プロトコルにしたがい、各時間での画像を作成した。そのダイナミック画像から血流量を計算した。ここで、散乱線補正を施した画像、散乱線を取り除いて再構成した画像(これはシミュレーションだからこそできるもので、真の画像とした)を作成した。その結果、視野外にある肝臓や肺に強い放射能がある場合、散乱補正画像は真の画像に比べて過大評価していた。このとこはPET画像の定量値は、視野外に強い放射能がる場合、過大評価することを示している。しかし心筋血流量の定量値はほとんど変化がなかった。これは、視野外放射能の影響は、心筋の放射能度の変化率には影響を与えなかったためと考えられる。
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