研究課題
平成23年度は主として、昨年度得られた結果の検証および応用を行った。これまでは、シミュレーションを用いてO-15標識水心筋血流定量PET検査における視野外放射能の影響を調べた。シミュレーションの妥当性は、散乱ファントムによる散乱フラクションの実験値とシミュレーションの比較によって一昨年度の研究で示した。心臓をPETの視野中心に合わせだ場合、肺や肝臓等の心臓と隣接している臓器が高い集積を持つようになり、それらの大部分は視野外にある。これらの放射能起源による散乱が心筋血流量の定量値に影響があると考えられているため、この影響を情報通信研究機構が開発した数値人体モデルとシミュレーションコードGeant4により詳細にシミュレーションした。シミュレーションだからこそできる散乱線を除いて再構成した画像(真の画像)と、散乱線補正をした画像との比較を行った。なお画像再構成は市販のPETのソフトウェアを用いている。その結果、昨年度は視野外にある肝臓や肺に放射能がある場合、散乱補正画像は真の画像に比べて過大評価していたと報告したが、画像再構成のオプション(メーカー独自のもので詳細は良く分からない)を変えると、散乱線補正画像は真の画像とほぼ一致し、O-15標識水心臓PETを模擬した系において、散乱線補正の精度が良いことを示た。また、シミュレーションのダイナミック画像とコンパートメントモデルを用いて心筋血流およびPTF(Perfusable Tissue Fraction:残存潅流組織分画)の定量評価を行った。その結果、心筋血流は、散乱線補正をしなくても真の画像から得られた血流値と同程度の値が得られた。これは血流がトレーサーの洗い出しから計算され、絶対値にあまり影響しないためだと考えられる。しかしPTFについては、散乱線補正をしないと正確な定量値を算出することができない。これはモデル式を考えれば予想できる結果で、PETの定量値(画像の画素値)が正確でないと、PTFの正しい値が得られないことを示している。
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Annals of Nuclear Medicine
巻: Vol.26, No.3 ページ: 214-221
DOI:10.1007/s12149-011-0561-4