研究課題
重症糖尿病患者に対する膵島移植医療において、安定して質の高い膵島を得る方法を確立することは移植成績の向上に直結する重要な課題のひとつである。そこで本研究では、保存過程の虚血状態や、37℃の閉鎖回路内で行われる膵島分離工程での溶存酸素濃度の低下による膵島損傷を解決するために、膵臓摘出直後から膵島分離終了までの間継続して酸素供給を供給するシステムを確立し、質の高い膵島を安定して回収することを目的とした。昨年度のラット膵臓を用いた実験において、人工ヘモグロビンの導入によりで保存膵組織の酸素化を試みたが、分離膵島の収量や質の向上は見られなかった。そこで、平成22年度は、心停止ドナーを使用せざるを得ない我が国の膵島移植の現状を鑑み、温阻血を約40分被った臨床疑似モデルであるブタ膵臓を用いて、分離過程における酸素化に特化して通常回路と加圧式中空糸モジュール導入回路により膵島分離を施行した。分離回収したブタ膵島の品質について、膵島収量、培養中残存率、エネルギー保持率、viabilityなどを評価したところ、現行の通常膵島分離回路に比べ、加圧式中空糸モジュールを導入した膵島分離回路を使用することで分離膵島のenergy statusが向上し、それに伴いアポトーシスに陥る膵島の割合が有意に減少する事が判明した。また、膵島の収量や機能も温阻血障害を伴う膵島分離においては顕著に改善する事が判明した。回路の煩雑さや容存酸素濃度の継続的モニタリング手法などに課題を残すものの、本研究のストラテジーは心停止ドナーの使用を余儀なくされている我が国の膵島移植にとって有用である事が本研究により明らかとなった。
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Transplantation
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