下肢虚血マウスへ静注により全身投与されたB.longum菌は48時間までに速やかに非虚血肢より消失し、嫌気性環境である虚血部位にのみ集積することが示された。局所の虚血が続いている間は経時的に同部での増殖を続け菌数を増やすが、血流比で健常部の0.4-0.5まで血流が改善すると自然にB.longum菌は消失する。虚血程度がより重症なモデルで確認しても同様の傾向をしめした。B.longum菌の菌数は投与後日数ではなく、虚血程度に対応して変化することが明らかになった。また、ミニブタを用いた心筋梗塞モデルにB.longum菌を心筋内筋注した場合、健常部位に筋注された菌は7日目までに消失する一方、心筋梗塞部位では7日目前後でも10^5cfu/g以上の菌が存在し続いていることが明らかにされている。安全性についてはマウス下肢虚血の組織学的検討において、虚血肢の骨格筋細胞間にB.longum菌の集積を認めたがB.longum菌周囲の筋細胞の壊死や脱落、組織間の浮腫などは認めず、B.longum菌集積による細胞障害性も組織学上ないものと思われた。また静注された菌は脾臓・肝臓といった網内系で一過性に検出されるものの、そのレベルは三日目には10^2~10^3cfu/g程度と低レベルであり、6日目までにほぼすべての臓器で消失する。血液中からは投与翌日より検出されなかった。以上の結果より、B.longum菌の虚血部位特異的集積と、局所および全身に対する安全性は証明されたと考えている。またこれらの実験はスペクチノマイシン耐性遺伝子を組み込んだプラスミドベクターを用いて、培地にスペクチノマイシンを添加して行われており、B.longum菌にトランスフェクトされたプラスミドベクターに組み込まれた遺伝子が集積部位で発現することも同時に確認されている。
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