1. HER2陽性乳癌患者の手術後に、トラスツズマブ投与前として末梢血を約30-50mlの採血を実施した。またトラスツズマブ投与(1年間、三週毎)中、投与後にもそれぞれ30-50ml程度採血を順次実施している。採取した血液は末梢血単核球(PBMC)に精製し、匿名化及びコード化した状態で保存している。 2. 解析可能なHLAタイプがHLA-A0201もしくはHLA-A2402の二種類に限定されるため、患者末梢血を用いてHLAを検索している。 3. 保存したPBMCはマイクロビーズを用いてCD8+T細胞に精製し、HER2ペプチド存在下に培養することで、HER2特異的CD8+T細胞の誘導を試みた。コントロールとしてCMV、EBNAペプチドを用いている。 4. HER2特異的CD8+T細胞の解析:3)で誘導されたCD8+T細胞を用いて、ELISPO TassayにてHER2特異的IFNγ産生性CD8+T細胞の存在を解析した。まだ症例集積が少ないが、健常人と比較した場合、HER2陽性乳癌患者においてHER2特異的CD8+T細胞の存在が術後一年後においても確認できた症例が存在する。一方でトラスツズマブ前後での違い、HER2特異的CD8+T細胞の長期的な存在期間については今後の解析が必要である。HLA-A0201を有する症例の場合、HER2テトラマーが有用であるため、ELISPOT assayとともにフローサイトメトリーによるHER2特異的CD8+T細胞の頻度の解析も追加している。 5. 2010年2月時点で解析可能なHLAを有し、かつ追跡可能である症例は、HLA-A2402 8例、HLA-A0201 1例である。今後も症例集積を継続予定である。 6. トラスツズマブ投与前後において、HER2特異的CD8+T細胞とともに、抗腫瘍免疫を抑制する制御性T細胞(FOXP3陽性細胞)についても、フローサイトメトリーを用いて、解析中である。
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