研究概要 |
移植後、免疫寛容状態になっているレシピエントの末梢血中にγδT細胞、Vδ1TCRを有するγδT細胞が増加していることが判明している。免疫寛容状態におけるVδ1+γδT細胞の免疫制御細胞としての働きの証明と、そのγδ細胞の同定、分離、増殖のための研究を行っている。 上記のVδ1+γδT細胞そのなかでも、とりわけ特異的なCDR3配列のTCRを特定し、そのTCRにたいする抗体の精製を試みている。 更に、肝内のγδT細胞の同定、および、そのTCRのCDR3配列の検討を行った。末梢血で見られたような、特異なCDR3配列の再現性は認められなかった。今後、更に検討が必要と考えられた。そのため、γδT細胞にたいする抗体を精製して、移植肝生検の組織免疫染色を試みている。更に、摘出肝中のγδT細胞を抽出して、そのCDR3配列を調べている。 健常人の末梢血から採取したVδ1+γδT細胞をある条件下で培養し、増殖させるとリンパ球混合試験における免疫反応を抑制させる、いわゆる免疫制御性の応答をすることが明らかになった。γδ細胞の増殖刺激となるリガンドとしてMICA, MICBが知られているが、アロ抗原との反応が起こるとMICA, MICBが出現することが判明している。また、拒絶臓器にMICA, MICBが出現するとの報告があり、移植肝中のMICA, MICBの発現と拒絶反応、免疫寛容の状態、さらには、移植後のアログラフトとの免疫応答が免疫制御性のγδT細胞を刺激、誘導する、つまり、HLAの相違および、HLAに対する免疫応答がこの免疫制御性γδT細胞の増殖、活性化につながるとの仮説のもと、γδT細胞が増殖している患者さんに対して、抗ドナー抗原に対する免疫応答の評価とγδT細胞の増加、活性化の関係について研究を行っている。
|