前臨床ミニブタモデルでこれまで免疫寛容(免疫抑制剤なしで拒絶が起きない状態)のマーカーと考えられていた制御性T細胞の特異的遺伝子;FOXP3発現が、逆説的に拒絶の早期に末梢血中で高くなることを見出した。本研究では、さらにミニブタのモデルを用いて拒絶時のFOXP3の発現のメカニズムを明確にし、FOXP3が低侵襲性の信頼できる肺移植の早期拒絶のバイオマーカーとなりうるかどうかを検討した。今後とも、本研究で早期拒絶のバイオマーカーが確立されれば全例に多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法が可能となる。さらに、この方法で肺移植の拒絶の早期における拒絶のバイオマーカーが確立されれば、すべての肺移植の患者に強力な免疫抑制剤を投与するという現行のやり方を改め、ベースラインの免疫抑制剤の量を減らしたうえで、FOXP3を拒絶マーカーとして患者のモニタリングを行い、拒絶が起きた場合には速やかに免疫抑制剤を増やすという、個々の患者に合わせたテーラーメイド的免疫抑制療法が可能となり、過剰免疫抑制による患者の感染症死を激減することができると期待される。本研究は多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法の一歩となる方向に位置づけたと言える。
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