研究概要 |
現在我が国において、乳癌は女性における罹患率第1位の癌である。乳癌の診断・治療法はこれまで世界中で研究され発展してきたが、依然として再発・転移に対する治療は困難なままである。乳腺組織は豊富な間質構造を有するため、癌間質相互作用が乳癌の高い浸潤能、転移能、治療抵抗性に強く影響を与える。これまでにCD34,CD44,CD54,CD105などの表面抗原解析を膵癌や大腸癌由来の線維芽細胞にも行い、そこに様々なphenotypeが存在することを発見した。乳癌においても癌由来線維芽細胞の機能は一様でなく、治療抵抗性に深くかかわるものや血管新生に影響するもの等が存在すると推測される。平成21年度は,CD133,CD44,EpCAM,CXCR4,c-METを用いて乳癌細胞株から癌幹細胞の候補となる細胞集団を選択的純化して、分子生物学的な特徴を検討した。その結果、EpCAM以外の表面マーカーを用いた場合、それぞれ陽性細胞集団および院生細胞集団を認め,現在これらの細胞集団のソートにより、これらの細胞集団の個々の特性を検討している。癌幹細胞の特徴を明らかにするため低酸素状態における各種マーカーおよびmicroRNAの発現変動も検討し、EMTに関わる分子群の上昇を認めた。さらにNotch ligandおよびFAS/FAS ligandの解析も行い,他の癌腫と比較して特徴的な発現パターンを認めた。今後、間質相互作用に重点を移し解析を進めていく予定である。
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