研究概要 |
One-step nucleic acid amplification (OSNA)法は,本邦で研究・開発された先進的な分子病理学的リンパ節転移診断法である.従来の病理組織学的検索法ではリンパ節の一部の割面しか観察できず,リンパ節全体の腫瘍量の評価は困難であった.しかし,OSNA法ではリンパ節全体が検索でき,転移量をサイトケラチン19mRNAコピー数で半定量化することが可能である.そこで,今年度は実臨床でのOSNA法の有用性の証明を目的とし,OSNA法を用いた乳癌リンパ節全検索法と従来の病理組織学的なリンパ節部分的検索法とを比較して,1)センチネルリンパ節(SN),2)郭清リンパ節(Ax)それぞれにおいて,転移陽性率の違いを明らかにする研究を行った.対象は下記1),2)で,全例が放射性同位元素を用いてSN生検が行われたpT1-2症例.1)SNは,2008年に2mmスライス組織診で検索した617例と2009年4月~2010年1月にwhole lymphnodeをOSNA法で検索した431例.2)Axは,2009年4月~2010年1月にOSNA法にてSN陽性で腋窩郭清を行い,Ax全てを最大1割面組織診で検索した58例とOSNA法で検索した43例.SN,Ax転移率それぞれを,組織診群とOSNA法群で比較した.また,症例群間の臨床病理的な背景因子について,χ2乗検定を行った.結果は,1),2)において,組織診群とOSNA法群の背景因子に有意差は認めなかった.1)SN転移率は,2mmスライス組織診19%(118/617),OSNA法24%(102/431)であり,OSNA法が5%高率であった.2)Ax転移率は,最大1割面組織診19%(11/58),OSNA法65%(28/43)であり,OSNA法が約2.5倍高率であった.以上より,OSNA法は,従来の病理組織学的検索法では割面に現れなかった転移巣を検出している可能性が示唆された.さらに,次年度以降で,患者にQOL低下をもたらす腋窩リンパ節郭清の回避を目的とした郭清リンパ節転移予測ノモグラム(簡易計算図表)などを開発し,個別化医療の推進への貢献を目指す。
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