研究概要 |
乳癌は比較的若年者に頻繁に発生することから、単に生命予後のみならずQuality of Lifeの観点からもその克服が急務である。特に、エストロゲン受容体(ER)陰性・プロゲステロン受容体(PgR)陰性かつHer2陰性のいわゆる「トリプルネガティブ乳癌(TNBC)」は特に予後不良であり、悪性形質発現の解析が必要である。癌の浸潤・転移には上皮-間葉転換(EMT)という過程が必須である。EMTでは癌細胞形質の変化が起こるが、この過程はESCRT細胞内輸送系によって制御されている可能性がある。そこで本研究では細胞内小胞輸送系、特にVps4等から構成されるESCRT系を介した悪性形質制御を解析した。不活型Vps4を発現する細胞株では、in vitroにおける形態変化、運動性の亢進に有意な差はなかったが、マウスにおける造腫瘍性が軽度亢進した。EMT誘導因子を発現させた乳がん細胞では、SP,CD44^+/CD24^<-/low>が2倍以上に増加した。トリプルネガティブ乳がんにおいてはESCRTがよく発現しており、癌幹細胞を増加させることにより悪性度を制御しうることが示唆された。
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