| 研究概要 |
本研究は、大腸全摘術後に必発である下痢改善を目的に投与されるloperamideを例にとり、消化管大量切除後の各種病態を改善する薬剤効果判定のためのin vitro、in vivoの評価システムを作り上げることである。今年度は、ナトリウム輸送を評価するin vitroのシステムを検討した。
ナトリウム輸送を評価するためには、輸送にかかわるsodium/glucose cotransporter-1、Na/K ATPase α1,およびβ1 subunit、epithelial sodium channel α-、β-、γ-subunit、prostasinなどをもれなく発現している細胞を用いることが理想的である。各種上皮細胞株におけるmRNAレベルでの発現を検討したところ、いずれの分子も生体における分化した上皮細胞と比較すると発現レベルは極めて低いことが判明した。従って、各種のナトリウム輸送機構の検討には数種類の細胞を使い分けたり、遺伝子導入などの方法により着目する分子を強制発現する方法が必要と思われた。
電気生理学的検討によるナトリウム輸送の観察では、実際の短絡電流のレベルや薬剤投与による変化が極めて小さく、有意な差として観察することができなかった。これは、上記のように輸送にかかわる分子の発現レベルが低いことや、絨毛様構造をとる実際の粘膜と異なり単層培養であることが影響していると考えられ、変化を増幅して観察するシステムを作り上げる必要があると思われた。
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