肝細胞癌の肝外転移を有する患者は、従来有効な治療法が存在しなかった。活性化自己γδT細胞療法は、癌免疫において重要な役割を果たしているγδT細胞を、患者より採取した血液中から採取、培養し、再び患者体内に注入することで癌免疫の活性を上昇させるものである。本治療法は、他分野の癌に対する有効性と安全性が実証されつつあり、肝細胞癌肝外転移患者に対しても生命予後が改善する可能性が期待されている。平成21、22年度は対象患者のエントリーを10例予定していた。しかし、切除不能肝細胞癌を適応疾患とし、スペインで行われた大規模無作為化比較臨床試験で有効性の証明された分子標的治療薬ソラフェニブが平成21年に市販され、いまだ本邦の患者での有効性は証明されてはいないものの、一般的には現時点での肝外転移合併肝細胞癌患者に対する標準治療と捉えられている。このためにわずか3例(うち1例は細胞培養が不十分で実施中止)のエントリーとなった。一方、同じ原発性肝癌である肝内胆管癌に関しては、術後補助療法のセッティングで治療患者を募ったところ、順調に患者のエントリーが進み、現時点で8例となった。この経験をもとに学会での発表を行い、他の専門家と討議する中で今後の注意点、着目点が浮かび上がった。特に、同じ患者でも担癌状態には段階的なステージがあり、どの段階で当治療を導入するかが重要なポイントである可能性がうたわれている。従来確立された治療法がなかった肝細胞癌肝外転移患者に対する標準治療と出来る可能性があり、ひいては我が国の肝細胞癌患者全体の予後を向上させうる。
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