肝細胞癌の肝外転移を有する患者は、従来有効な治療法が存在しなかった。活性化自己γδT細胞療法は、癌免疫において重要な役割を果たしているγδT細胞を、患者より採取した血液中から採取、培養し、再び患者体内に注入することで癌免疫の活性を上昇させるものである。本治療法は、他分野の癌に対する有効性と安全性が実証されつつあり、肝細胞癌肝外転移患者に対しても生命予後が改善する可能性が期待されている。研究期間中に切除不能肝細胞癌を適応疾患とし、スペインで行われた大規模無作為化比較臨床試験で有効性の証明された分子標的治療薬ソラフェニブが平成21年に市販され、一般的には現時点での肝外転移合併肝細胞癌患者に対する標準治療と捉えられている。このため対象疾患範囲を拡大させ、同じ原発性肝癌である肝内胆管癌に関して術後補助療法として活性化自己γδT細胞療法を実施することにした。この結果、順調に患者のエントリーが進み、全体で11例となった。肝細胞癌肝外転移ではエントリー患者3人中2人が全身状態や肝機能が投与開始基準に抵触してしまい投与開始に至らなかった。また、投与出来た一人に関しても治療開始後1ヶ月で新規肝外転移が出現し、全身状態が悪化している。一方、肝内胆管癌に関しては同様の術後補助療法プロトコールで行っている膵癌に比較して良好に治療が開始されており、8人中7人が治療開始となっている。長期予後に関しては、多発、リンパ節転移陽性、切除断端陽性、という予後不良群を対象としているため長期観察患者では全例再発があり、他の治療に移行している。この結果から、現時点では必ずしも術後予後の改善に寄与しているとは言えない。今後のさらなる症例の蓄積が必要と考えられた。
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