研究概要 |
肝細胞癌の肝内転移の抑制のために、新生血管の発生に関与すると考えられるMetastatic Tumor Antigen (MTA-1)蛋白が肝細胞癌でどのように発現されているかを、申請者の施設(山梨県は東日本で肝細胞癌の発生数が特段に多い)で過去に切除した肝細胞癌症例の腫瘍部パラフィン包埋切片を用いMTA-1をはじめとして血管新生に関与すると考えられるVEGF, VEGF-R, EGF, EGF-R, CD31, HIF-1αの免疫染色を施行した。その結果、多中心性発生と考えられる再発を呈した群と、血行性肝内転移と考えられる群との間で比較検討するとMTA-1蛋白の発現とCD31の発現が血行性肝内転移群で高い傾向にはあったが有意差はなかった。またMTA-1蛋白ならびにCD31以外のVEGF, VEGF-R, EGF, EGF-Rそれぞれの発現は多くの症例でばらつきが大きく、2群間でその発現頻度に有意な差は認められなかった。さらにMTA-1の発現とVEGF, VEGF-R, EGF, EGF-R, CD31の発現は相関せず、MTA-1はこれらの因子とは独立していると考えられた。 また、HIF-1αの免疫染色では、HIF-1αは肝細胞癌の癌部には染色されず、非癌部肝細胞にわずかに染色されたが、多中心性発生と考えられる再発を呈した群と、血行性肝内転移と考えられる群との間で特に有意な差は認められなかった。しかしMTA-1蛋白の発現との間に有意な相関を見出すことはできなかったものの、MTA-1蛋白の発現が強いものにHIF-1αが強く発現されている傾向が認められた。しかしHIF-1αの発現とCD31を含めたVEGF, VEGF-R, EGF, EGF-R各因子との間に何らかの関係を見出すことはできなかった。今後、免疫染色での検索ではなくmRNAレベルの検討をする予定である。
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