研究概要 |
生体肝移植では、脂肪肝であり且つ容積が十分でないグラフト肝を有効利用することが出来れば、さらに多くの末期肝疾患患者の命を救うことが可能となるために、今回の研究が開始された。 最近ではドナーの安全性を重視し、過去に盛んに行われた右葉グラフトよりもグラフト容積の小さな左葉グラフトを用いることが多い。また、人口の高齢化に伴い、比較的年齢の高い親族がドナーとなることも多くなってきた。高齢・過小グラフトが臨床においては直面した課題である。 当施設の臨床研究においては、高齢ドナーの肝臓は脂肪肝の割合が多いことが明らかとなり、脂肪肝グラフトの限界を解明する重要性も高まってきた。 本研究の最終的なゴールは、如何に小さな脂肪肝が移植肝として有用か、また術式の工夫によりそれらの成績の向上が可能かどうかを見極め,さらに、還流液の工夫により脂肪肝過小グラフトを蘇らせることである。 同時に、脂肪肝モデルラットを用いて、部分肝移植を行い、抗血栓作用の他に、抗炎症作用、抗アポトーシス作用のあるAPCやTMを投与して脂肪肝過小グラフトの生着向上が証明されつつある。また、細胞レベルでの、固有の生物活性(抗血栓、抗炎症、アポトーシス制御、血管新生制御作用など)の探索では、APCとTMの有用性が明らかとなりつつある。 当該年度では、肝移植モデルのほかに、肝移植に近い肝大量切除後の虚血再還流モデルを作成し、移植モデルと同様な微小循環障害のメカニズムの解明に努めている。現段階ではAPC投与群では生存率は向上し、肝類同内皮障害の軽減と肝細胞実質障害の軽減を認めるところまでは突き止めている。
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