【目的】炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD))患者は高率に術後の感染症を発症し、医療費高騰の一因となっている。われわれは術後の感染性合併症が頻発するUC術直後に異常に活性化された顆粒球を除去する目的で白血球除去カラム(LCAP)を用い術後早期の異常炎症反応を制御し、術後感染性合併症(SSI)の発生を低下させることに成功した。今回この結果をもとにLCAPを同じく難治性炎症性腸疾患であるCD患者にも適用させるため、術前後の免疫反応を明らかにし、術後合併症の発症及び入院医療費を抑制する新しい治療法を確立する。【方法】基礎実験としてCD患者周術期血液サンプルの収集、および術前、術直後の好中球を分離し、好中球機能を網羅的に調査する目的で培養を行った。培養後の上清中のサイトカイン等の蛋白の定量をELISA法にて行なった。またE.coliとの共培養を行い、細胞死の検討をFACSにて行った。また、貪食能の検討もFACS解析を行った。【結果】CD患者の好中球は、貪食後viableな状態が維持されるが、その細胞死においてはapoptosis優位の細胞死からnecrosis優位となり、炎症性サイトカイン産生能が亢進することが明らかとなった。CD患者における細菌貪食後の好中球はhyperactivationの状態にあり、高いSSI発生率の機序の一因となっている可能性が示唆された。
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