研究概要 |
消化管粘膜上皮内分泌細胞から分泌され、膵β細胞でのインスリン分泌を刺激し血糖降下作用をもたらすインクレチンホルモンが、糖尿病治療として注目されている。このインクレチンホルモンにはGIPとGLP-1が挙げられる。GIPとGLP-1は成体では小腸粘膜上皮に存在するが、胎生期には、発生膵上皮に存在することが示されている。このインクレチンホルモンのインスリン分泌刺激は、β細胞内でのPdx-1遺伝子の核内移行・発現増強を介していることが示されている。以上の背景に立ち、本研究ではインクレチンホルモンたるGLP-1およびGIPの膵発生や成体膵組織維持における関与、とりわけβ細胞発生・維持における関与を明らかにし、傷害されたβ細胞再生能の回復を目的とした治療的介入の可能性について検討することを目的とした。 22年度の実験結果から、胎生期膵形成期および成体における幹細胞システムの理解が進みこれまで、(1)成体膵外分泌組織はSox9陽性膵管構造からの持続的細胞供給を受けて維持されているが、膵島組織はSox9陽性幹細胞領域からの細胞供給を受けず、既存細胞の自己複製で維持されていること、(2)胎生期Sox9陽性細胞は、内分泌細胞を含む全ての種類の膵細胞へと分化可能であるが、出生直後から数日間の膵島形成期を境に内分泌細胞能を喪失することが判明した(Furuyama et al.)。現在、その中でのGLP-1,GIPの意義に的を絞って検討を続行中である。特に着目しているポイントは、出生直後の膵内分泌細胞塊の増大と膵管構築から機能的膵島として遊走してゆくメカニズムにおけるGLP-1,GIPの意義である。残念ながら研究期間中に結論を出すことは出来なかったものの、基礎データが集積しつつあり、研究は続行する方針である。
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