研究課題
肝細胞癌の浸潤能・運動能を制御する分子を標的として癌の浸潤や転移を阻止する方法を確立することが本研究の目的である。これまでに私たちがGSK-3結合蛋白として同定したh-pruneは複数の癌種で浸潤転移能に深く関わっていることが報告されており、癌浸潤転移におけるh-pruneの役割について検討を進めた。(1)h-pruneのphosphodiesterase阻害剤(dipyridamole)は肝癌細胞株の細胞運動を抑制した。しかし肝細胞癌の臨床検体における免疫染色においてh-pruneの発現は不均一で、進行度や予後と相関を見出せなかった。また肝内胆管癌の臨床検体におけるh-pruneの発現はCEAやCA19-9と相関がみられたが、予後との相関を見出せなかった。肝癌臨床検体の凍結切片を用いたPCR法によりmRNAとの相関を検討している。(2)一方、h-pruneが甲状腺癌に特異的に発現していることを明らかにした。甲状腺非癌部及び腺腫様甲状腺腫におけるh-pruneの発現(4.4%、12.4%)に対して乳頭癌、低分化癌、未分化癌いずれにおいても全例にh-pruneの高発現がみられた。また転移リンパ節組織においても全例にh-pruneが発現しており、h-pruneが甲状腺癌の伸展に重要な役割を担っていることが強く示唆された。そこで甲状腺癌細胞株による検討を行った結果、h-prune高発現株は細胞運動能が高く、h-pruneの発現と細胞運動能に相関がみられた。甲状腺未分化癌細胞株(8505C、KTC-3)において、h-pruneに対するsiRNAやdipyridamoleは細胞運動能、浸潤能を有意に抑制したが、増殖能には影響を与えなかった。したがってh-pruneが甲状腺癌の浸潤転移に重要な役割を有することが示唆された。免疫不全マウスの甲状腺に未分化癌細胞株を同所性移植した甲状腺癌転移モデルを作成した。このモデルに対してdipyridamoleの腹腔内投与は気管浸潤や生存率を改善できなかった。h-pruneに対するshRNAをKTC-3細胞に導入し、h-pruneノックダウン細胞を樹立したため、甲状腺癌転移モデルにおける気管浸潤や肺転移を抑制できるかを評価予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Journal of Hepatology
巻: 56 ページ: 146-152
10.1016/j.jhep.2011.04.029
Annals of Surgical Oncology
巻: 19 ページ: 418-425
10.1245/s10434-011-1866-1
Surg Today
巻: (In press)
10.1007/s00595-011-0070-z
内分泌外科
巻: 28 ページ: 232-237
J Hepatobiliary Pancreat Sci
巻: 18 ページ: 689-99
DOI:10.1007/s00534-011-0379-4
Journal of Surgical Oncology
巻: 104 ページ: 3-9
10.1002/jso.21745
Journal of Gastrointestinal Surgery
巻: 15 ページ: 1173-1181
10.1007/s11605-011-1538-2
Digestive surgery
巻: 28 ページ: 9-14
10.1159/000321886
http://home.hiroshima-u.ac.jp/home2ge/index.html