本研究の当初の目的は、胆嚢癌における浸潤、脱分化のメカニズム解明と、間質の細胞、特に炎症細胞の役割の解明である。平成21年度は、Tumor budding (TB)、Tumor infiltrating lymphocyte (TIL)ならびにTILと相関すると報告されているMicrosatellite instability (MI)について解析おこなった。これらの検討項目のなかで、MIについては、有用なデータが得られなかったことと、解析費用がかさむ点から中断した。平成22年度は、予定対象症例全例のTBと脱分化、TILおよび予後と臨床病理学的因子の解析をほぼ完了することができた。その解析の結果、TBと脱分化はT2胆嚢癌の予後と密接な関連があることがあきらかとなり、臨床的にT2胆嚢癌の治療ストラテジーに関わる有用なデータであったので、英文で論文を作成し、現在投稿中である。 また、この胆嚢癌の研究をすすめているうちに、外科的に切除された胆嚢癌の中に、胆嚢腺筋腫症の特徴を有するものが相当数存在することに気づいた。胆嚢腺筋腫症は頻度の高い胆嚢の良性疾患で、症状がなければ通常経過観察されるが、もし、胆嚢癌との関連があれば、胆嚢腺筋腫症を切除することにより胆嚢癌の罹患率、死亡率を減らすことができる。この点は非常に重要であるため、解析をすすめ、今年度学会報告予定であり、現在、英文論文作成中である。 炎症細胞に関する研究があまり進んでいないので、今年度は、tissue microarrayを作成した後、浸潤炎症細胞の解析や癌の形態保持に関与する蛋白の発現状況についての解析を行い、次の研究課題につながる成果を出したい。
|