当教室で施行した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)および亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を対象として、術後経口摂取量の記録・解析、術後消化管造影画像、消化管の血流解析、ホルモン分泌のデータを牧集・解析し、胃内容排出遅延や術後経口摂取能回復遅延が生じる背景因子や原因を検討している。 平成22年度は、既存の手術症例を対象に1)経口摂取能の評価ならびに2)術後消化管造影検査画像解析、3)造影CTを用いた胃壁血流測定・解析、を主に行った。 平成16年から22年3月の間、当科で施行した膵頭十二指腸切除症例のうち、CT Perfusionによる胃壁血流評価と術後上部消化管造影を施行した91例を対象とした解析では1)経口摂取量は、平均術後20.9日で0.5を超え、退院までプラトーであった。術後21日間の累積食事量(TDI)は平均6.04だった。半量摂取可能日は累積食事量と強く相関した(相関係数-0.7439、p=0.0006)。2)造影剤の胃内通過秒数が短く、その後の空腸蠕動が良好な症例で経口摂取良好な傾向を認めた。一方、温存した前庭部の蠕動回数は経口摂取能と関連を認めなかった。3)胃血流動態とTDIに相関は認めなかったが、BFとEVは半量摂取可能日(相関係数-0.228、-0.295)と相関の可能性が考えられた。また、TDI値から摂取良好群と不良群との間の胃血流動態を検討すると摂取良好群で有意にBVが高値だった(p<0.05)。 術後経口摂取能を評価するにおいて、半量摂取可能日がTDIと相関し、回復基準となると考えられた。また胃壁血流動態と食事摂取能には明らかな相関ではないものの、影響を及ぼす可能性が考えられた。(本検討の途中経過は平成22年度の全国学会、研究会で発表をしている。) 最終目標はこれらの結果から膵頭十二脂腸手術におげる血行郭清範囲や再建術式を考察し、至適術式確立への一助とすることである。
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