肝切除後の肝不全や生体肝移植時のsmall for size syndromeの症例等に対する肝再生を促進する手段の研究は、今後の肝臓外科学の発展のために非常に重要であり、また劇症肝炎、肝不全の治療にも新たな展開をもたらすものと期待されている。現在既存の肝再生促進法には、肝細胞成長因子(HGF : hepatocyte growth factor)などの肝再生増殖因子の投与、高圧酸素療法、門脈結紮術などが知られている。しかし、いずれも実際の臨床に普及するほどには至っておらず、安全で強力な肝再生促進法の探索は非常に意義深いものと考えられる。今研究では、新たな肝再生促進法を開発するため、骨再生に有効性のある低出力超音波パルス(Low Intensity Pulsed Ultrasound ; LIPUS)の肝細胞に対する再生促進作用について解析、検討をすすめている。平成21年度は、in vivoでの低出力超音波パルスの肝再生促進に対する有効性を調べるために、実際の臨床における肝部分切除と同様な病態の動物モデルと考えられるマウス70%部分肝切除モデルに対して低出力超音波パルス照射し、(1)肝切除後の肝再生率、(2)肝機能、(3)肝細胞の増殖能、(4)肝再生増殖因子の発現4項目を中心に検討した。現時点では、免疫組織学的検査、real time PCRで低出力超音波パルスの効果により、HGF等いくつかの肝増殖因子の変化が生じることを確認している。
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