膵癌では多くの増殖因子レセプターやそのリガンドの発現が認められ、その悪性度との関連が報告されている. Neuropilin-1(Np-1)は増殖因子であるVEGF-Aと軸索の伸長阻害因子であるsemaphorin3Aのco-receptorとして働く膜蛋白である. Np-1は膵癌において過剰発現が報告されているが、その生物学的役割は明らかでない. Np-1高発現株PANC-1を用いNp-1発現をantisense法にて低下させたところ、Np-1 antisense clone(Np-1AS)ではその増殖、接着、浸潤が低下し、アポトーシスが有意に誘導された。さらに抗integrinβ1抗体の投与によりPANC-1の接着はNp-1ASに類似して減少した。IPおよびWBにてNp-1はintegrinβ1と蛋白複合体を形成していた.またPANC-1ではHGFにより浸潤が誘導され、Np-1ASではその浸潤が減少した。COLO-357を用いてNp-1高発現株を作成したところ、HGFによる浸潤は有意に増加し、その浸潤はHGF受容体c-Metに対するsiRNAの投与により抑制された。IPとWBによりNp-1とc-Metは蛋白複合体を形成していた。またHGFとNp-1の結合を阻害する抗Np-1抗体を用いたinvasion assayではPANC-1のHGFによる浸潤が有意に抑制された。Np-1はintegrinβ1、c-Metと結合して膵癌の増殖、接着、浸潤、アポトーシスに関与する. Np-1は膵癌の治療標的に成りうると考えられた。
|