研究概要 |
本年度は、m-TOR阻害剤であるTemsirolimusの悪性胸膜中皮腫細胞株(H226, H290, Y-meso14, MSTO211H, MRC-5, IMR-90, Met-5Aの細胞株を用いた)に対する治療効果をIn Vitroにて確認した。次いで、現在臨床にて同腫瘍に対して使用されているCisplatin, Pemetrexedeとの治療効果の比較、さらには各種薬剤の組み合わせによる治療効果について検討した。さらに血管新生因子の発現についても検討することに取り組んだ。解析方法としてはMTTアッセイ、FACS法、ELISA法、ウェスタン法などを行った。 その結果、mTOR阻害剤であるTemsirolimusは悪性胸膜中皮腫細胞株の増殖抑制効果を濃度依存性に示すことをIn Vitroで示した。特にp70s6kのリン酸化を阻害すること、またアポトーシスのマーカーとして知られるcleaved-caspase3の発現レベルを亢進させることを確認した。FACS法により、MSTO211H以外の細胞株、H226.H290.and Y-MESO14ではアポトーシスの誘導が確認された。さらにTemsirolimusとCisplatinは相乗効果を示すこと、Temsirolimusは抗血管新生効果、特にVEGF発現抑制効果を示すことを明らかにした。Temsirolimusは杭腫瘍効果と、血管新生抑制効果の両面の作用を持つことが示された。 本研究のごとく、悪性胸膜中皮腫に対してのmTORを標的とした治療法の開発は、全世界でもIn Vitroの研究はもとより、In Vivoでもわずかな成果が認められるのみである。本研究は現在使用されている抗腫瘍剤、外科的、放射線治療をもってしても根治困難な悪性胸膜中皮腫に対しての新規分子標的治療法を開発するという点で意義あるものである。
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