当研究の目的はカブトムシから単離・改変された抗菌ペプチドが人工血管感染防御に有用であることの検証を行う事である。平成21年度の計画としては 1. MRSA腹膜炎マウスの作成 抗菌ペプチドの治療効果の確認 2. MRSA腹膜炎マウスでの人工血管感染予防効果の検討 を行う予定であった。しかし、実際にはより臨床状況に即したモデルで実験を行う事で臨床応用につながると考えられた。このため、抗菌ペプチドの治療効果を確認する実験に、すでに効果検討が行われているMRSA腹膜炎マウスモデルではなく、臨床的な敗血症・腹膜炎モデルであるマウスの盲腸穿刺腹膜炎モデル(CLP : Cecal Ligation and Puncture)を用いて行う事とした。 【方法】マウス(C57BL/6J jcl)を用いてCLPモデルを作成した。回盲弁直下の盲腸を結紮し、18G針を用いて2カ所穿刺した。そのまま閉創する群(control群)、抗菌ペプチドを0.5mg腹腔内投与してから閉創する群(peptide群)を作成した。 生存日数とCLPモデル作成4時間後にエンドトキシン、IL-6、TNF-αを測定した。 【結果】生存日数はLog-rank検定にてcontrol群に比してpeptide投与群で有意に延長した。また、IL-6、TNF-α、血中エンドトキシン値もcontrol群に比してpeptide投与群で有意に低値を示した。 【結論】カブトムシから単離・改変された抗菌ペプチドは、CLPモデルへの投与で有意に生存日数を延ばすだけでなく、炎症反応も抑え治療効果があると考えられた。対象菌が判明しているモデルだけでなく、様々な腸内細菌が含まれている臨床的な腹膜炎モデルでも抗菌ペプチドの効果がある事がわかり、臨床治療にも十分応用できる事が示唆された。
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