今回はratを全身麻酔下に開胸し、右肺にFIBRIGELをラッピングし呼吸生理に与える影響について検証した。今までの実験でFIBRIGELは、加熱処理により縮小はするもののコラーゲン特有の収縮性に富む状態とはならずゲル状のままであった。このため、加熱処理を加えない状態のFIBRIGELを使用した。開胸のみ行った群(C群)、1枚のFIBRIGELをラッピングした群(R1群)、2枚ラッピングした群(R2群)に分け検証した。Wister系ratをエーテル麻酔後に呼吸回数80回、気道内圧20cmH2Oの設定で人工呼吸管理をした。開胸した状態で3群間で気道内圧、換気量、流速の測定を行った。圧はC:23.14±1.68cmH2O、R1:23.75±0.65cmH2O、R2:22.91±1.43cmH2Oであり、6回分の総換気量に関してはC:217.85±38.02ml、R1:213.51±37.21ml、R2:212.07±34.77ml、flowはC:73.72±15.53ml/s、R1:77.04±14.79ml/s、R2:73.89±14.67ml/sであり、いずれも3群間で有意差は認めなかった.前回までのような効果が得られなかった原因として、うまく肺をラッピングできていないこと、手術手技にばらつきがあること、FIBRIGELがin vivoレベルで効果が少ないことが考えられた。次に肺気腫モデルを作成したが、病理学的な評価では肺門よりに気腫性の変化が強くhomogeneousな気腫にならなかった。これは末梢の肺胞レベルまでelastaseが到達していないことが原因と考えられた。ただし、肺胞間距離は正常肺36.5μm、肺気腫モデル122.5μmであり、末梢までelastaseが到達可能であれば肺気腫モデルが作成可能と考えられた。
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