肺移植におけるドナー不足を解消する手段として、近年、マージナルドナー肺や心臓死ドナー肺が、積極的に利用され始めている。このようなドナー肺の安全な利用のためには、ドナー肺の質を移植前に客観的に評価する必要がある。そこで、申請者は、体外循環回路を用いてドナー肺の質を評価し、さらに、治療を行うという計画を立案し、以下の研究を行うこととした。(1)ブタ傷害肺モデルを作成する(体外循環回路を用いた評価と肺移植後の評価を含む)(2)体外循環回路を用いた傷害肺の治療の検討を試みる。 われわれは、平成21年度の実験計画として、(1)傷害肺(マージナルドナー肺、DCDドナー肺)モデルの確立を掲げて実験を開始した。複数の傷害モデルを立案したが、マージナルドナー(肺水腫モデル)、脳死ドナー(脳死ドナーモデル)の二つのモデルが再現性をもった安定した傷害モデルとして使用できることを確認した。 それをもとに、平成22年度の実験計画として、(1)の残りの実験としてDCDドナー肺モデルの確立および(2)ビーグル犬を用いた中大動物体外循環を用いた傷害肺の治療の検討を掲げて実験を開始した。(1)のDCDドナー肺モデルにおいては、4Hの温虚血後に直接肺移植するコントロール群を確立できた。その後、同時間の温虚血後に中大動物体外循環を用いてドナー肺を潅流し、さらに肺移植を行うという実験群を確立した。後者の群において、前者の群よりも肺機能が有意に良好であることを証明した。さらに、そのメカニズムを検討するために、種々の液性因子や分子の発現、等につき検討を開始しているところである。
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