研究課題
本研究は肺移植術後成績の向上とドナー数拡大を目指し、これまでに大動物モデルによって得た、一酸化炭素(CO)吸入により肺虚血再灌流障害(IRI)抑制効果が得られるという結果を発展し、臨床肺移植に即した前臨床大動物実験となるミニブタMHC完全不適合肺移植モデルを用い、(1)CO吸入の移植肺生着延長への寄与をinvivo、in vitroからの詳細な検討から明らかにすること、(2)副作用評価を加味した適切なCO投与法、投与量、投与期間等についての前臨床データを示すことによって、従来の免疫抑制療法とは異なる機序に基づくドナー臓器保存法・治療法・創薬という臨床応用への展開を目的とする。平成22年度は、平成21年度に得た移植時ドナー+レシピエントCO吸入により移植肺生着延長効果が得られるという結果をもとに(Sahara H et al Transplantation 2010)、ドナーのCO吸入のみでの移植肺生着延長効果(実験1)、術後のレシピエントCO吸入療法の効果(実験2)を明らかにする実験を、12日間の短期高濃度タクロリムス投与下のMHC完全不適合ミニブタ肺移植モデルを用いて行った。結果1:ドナーに対して、グラフト摘出までの180分前間CO吸入(250ppm)を行ったところ、CO無吸入症例に対し有意な生着延長効果が得られ、病理学的に術直後の虚血再灌流障害抑制所見が認められた。結果2:レシピエントに対する術後14日間の1時間CO吸入継続は、周術期のCO吸入のみの症例に対する生着延長効果を示さなかった。いずれの実験でも既報のようにCOHb濃度は15%以下に維持され、明らかな副作用は認めなかった。これらの結果はドナーCO吸入のみでも効果が得られる可能性を示し、CO毒性への懸念が少ない臨床応用性の高い治療方法の一つとなることを示す重要な知見であると考える。
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Transplantation
巻: 90(12) ページ: 1336-1343
J Thorac Cardiovasc Surg.
巻: 139(6) ページ: 1594-1601
http://kuris.cc.kagoshima-u.ac.jp/412847.html