研究の目的:頸部気管軟骨切除モデル犬の軟骨欠損部に細胞増殖因子徐放ゼラチンスポンジを移植することでより良好な気管軟骨再生を誘導することを目的としている。 これまでのイヌ頸部気管軟骨輪腹側部欠損モデルにおける研究によりb-FGFあるいはBMP-2の単独徐放よりも共徐放でより良好な軟骨再生が可能であること、軟骨再生のための至適用量としては成長因子徐放ゼラチン板5cm^2あたりb-FGFおよびBMP-2それぞれ100μgとの結果を得た。 人工気管移植実験:生体吸収性材料であるポリ乳酸カプロプロラクトン共重合体(PLAC)よりなる厚さ3mmの円筒状多孔性足場をポローゲンリーチング法を用いて作成した。イヌ頚部気管を3cm(5気管軟骨輪)切除した。BMP-2とbFGFそれぞれ100μgを含浸させた塩基性ゼラチン・酸性ゼラチン・PLAC多孔性足場をbFGF+BMP-2徐放人工気管とし、イヌ頚部気管欠損部に端々吻合した(計3頭作成)。気管軟骨再生の臨床応用へは早期の完成を要すると考え当初の予定を変更し全例1ヶ月の時点で犠牲死させ組織学的に検討した。 研究結果:1頭が27日目に死亡、2頭は生存した。1週毎の内視鏡検査では内腔の狭窄は認めなかった。死亡例は内腔保持のPLAC足場の吸収に伴い内腔が虚脱したのが死因であった。組織学的評価では肉芽組織の高度増生を認めこの肉芽組織により内腔保持が可能であったと考えられた。イヌ頸部気管軟骨輪腹側部欠損モデルで認めた軟骨組織の再生は認めなかった。
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