研究概要 |
我々は、マウスの虚血組織で血小板由来の血管新生促進因子(VEGF,SDF-1)が、骨髄由来のVEGFR1陽性細胞を動員し、血管新生を増強させることを報告した。申請者は東京医科歯科大学渋谷正史教授との共同研究でVEGFR1のシグナルが入らないVEGFR1チロシンキナーゼ欠損マウス(VEGFR1TK-/-)を作出した。本研究では,VEGFR1TK-/-と野生型ヌウス(VEGFR1TK+/+)を用いて(1)抗がん剤(5FU)投与後の骨髄機能回復能の違いの検討(2)下肢虚血モデルにおける虚血改善能力及び腫瘍接種モデルにおける腫瘍増殖能の違いの検討(3)虚血部、腫瘍周囲組織の新生血管が骨髄由来のVEGFR1陽性であるか否かについて探求した。 結果 1.腫瘍接種モデルを用いた検討 A VEGFR1TK+/+とVEGFR1TK-/-との腫瘍増殖能の比較検討 腫瘍接種モデルにおいてVEGFR1TK-/-はVEGFR1TK+/+に比べ腫瘍の増殖の遅延を認めた。 B 血中のSCF, pro-MMP9, SDF-1値の経時的変化の測定 VEGFR1TK-/-はVBGFR1TK+/+に比べ。有意に血中で骨髄ストローマ刺激因子であるStem cell factor (SCF), pro MMP-9, SDF-1の低下また腫瘍ストローマー側でのVEGFR1陽性細胞の低下も認めた。 2.骨髄移植による虚血の改善及び腫瘍の増殖抑制の検討 VEGFR1TK+/+の骨髄細胞を移植されたVEGFR1TK-/-はVEGFR1TK-/-をVEGFR1TK-/-に移植されたマウスよりも有意に虚血の回復の遅延また腫瘍増殖の遅延を認めた。
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