本研究は、透明なステントを用いて、ステントを超えて光線力学的治療(Photodynamic therapy:PDT)が可能かどうかを検討するものである。 通常シリコンステントは、X線透視下に確認できるようにシリコン内にバリウムが混入され、白色であるため、ステント挿入後はステント留置部の病巣の観察が不可能であり、また腫瘍に対して直接的な治療が困難となる欠点があった。しかし最近、病巣部が観察できるように透明になったステントが開発された。この特徴を利用し、ステントによってカバーされた病変部への直接的な治療が可能となることが示唆された。 そこで我々は、PDT用半導体レーザー(松下電器産業)によるレーザー照射を透明なステント(Dumon Gold Studded Stent:NOVATECH社)に対して行い、ステントを通した後の先端出力の変化をパワーメーターを用いて計測した。その結果、ステントを通した後、レーザー出力が22.2%減少することが分かった。 通常、光線力学的治療のレーザー照射は100mWの先端出力、11分7秒間の計100J/cm^2で行う。 ステントを通した先端出力の減少および実際のレーザー照射における時間も考慮し、ステント留置部に対して計100J/cm^2のレーザー照射を行うためには、ステント留置部には先端出力180mW、照射時間は11分55秒が適切と考えられた。 次に、実際にブタの気管に対して、正常部とステント留置部に対して光線力学的治療を行いその効果を比較した。 レーザー照射は100J/cm^2に統一した。ブタに全身麻酔をかけ、第2世代光感受性物質であるNPe6(レザフィリン)を静脈投与後、正常の気管には180mW、9分16秒のレーザー照射を行い、ステント留置部には180mW、11分55秒のレーザー照射を行った。 現在、光線力学的治療を行ったブタの気管を摘出し、病理組織学的にその効果を検討中である。
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