本研究は、透明なステントを用いて、ステントを超えて光線力学的治療(Photodynamic therapy : PDT)が可能かどうかを検討するものである。 通常シリコンステントは、X線透視下に確認できるようにシリコン内にバリウムが混入され、白色であるため、ステント挿入後はステント留置部の病巣の観察が不可能であり、また腫瘍に対して直接的な治療が困難となる欠点があった。しかし最近、病巣部が観察できるように透明になったステントが開発された。この特徴を利用すると、ステントによってカバーされた病変部の観察だけでなく、直接的な治療が可能となることが示唆された。 そこで前年度、ステントを通した際のレーザー出力の減衰を測定し、そのデータをもとに実際にブタを用いて動物実験を行い、ブタの正常気管と透明ステント留置部の気管に対してPDTを施行した。 本年度に入り、前年度に施行した動物実験の結果を病理学的に検証した。PDTを行った1週間後にブタを解剖し、ステント留置部と正常部のそれぞれのPDT施行部の病理学的な変化を観察した。その結果、ステント留置部と正常部共に、気管壁の浮腫状変化、血管新生及び炎症細胞浸潤などの変化を認めた。この結果は、透明タイプのステントを留置後に同部へPDTを行うことは可能で効果があり、中枢気道の進行肺癌に対する治療の一助になることを示唆していた。 しかし、まだ症例数が少なかったため、再び同様の実験を行った。その結果、前回と同様の結果を得ることができた。これは昨年度の実験結果は再現性があり、有用であることを支持するものであった。 現在、これらの結果について論文を制作中である。
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