癌幹細胞のふるまいは、癌全体の活動性、薬剤抵抗性に関与していることが推測されている。本研究では、臨床検体の切片を用いて免疫組織学的染色を行い、肺癌の癌幹細胞の局在を調べることによるニッチの局在の検討を行った。現在まで癌幹細胞の分子マーカーであるとして報告されている中から、CD133は脳腫瘍や大腸癌で報告された後、肺癌でも分子マーカーとして報告されている。以前の報告では非小細胞肺癌患者での切除標本におけるCD133の発現は非常に低いことが示唆されていた。そこで、術前化学療法を行った症例での治療抵抗性の腫瘍を検討することによりCD133の発現を観察しうると仮説した。肺線癌への通常の治療として行われる肺切除を予定している患者5例へ、文書を用いて研究内容を説明し、同意を得られた場合に患者の治療として行われた腫瘍組織の一部を本研究に使用した。また同じ症例において、最近EGFRチロシンキナーゼ阻害剤投与の効果予測として臨床的な意義の高いEGFRの発現についても免疫染色を行った。CD133とEGFRとの関係をみるために2重染色も計画した。EGFRの発現は5例中4例で見られ、発現のあった症例では14.7%から98.9%の発現率であった。しかし、全5例でCD133は発現を認めなかった。次に、ヘキスト染色により分画されるSP(Side Population)細胞は肺癌においても癌幹細胞を含むと考えられている。現在は肺切除を予定している患者から同意を得られた症例の腫瘍組織の一部を用いてSP細胞のソーティングしている。今後はこれらのSP細胞での発現マーカーや遺伝子的な背景の検討を行い、分子マーカーの検討と、肺癌組織出での染色を行う予定である。
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