研究概要 |
平成21年度、化学療法剤ACNUを脳内・脳腫瘍内へ局所投与した際に生じる組織変化の検討を行った。その結果、局所毒性が無視できる低容量でACNUを脳内へCED法を用いて投与した後、7-12日の間に一時的に脳血液関門が開くことが判明した。具体的にはACNUをCED法を用いて正常ラット脳内へ投与した3,7,12,30日後に色素エバンス・ブルーを尾静脈より注入。直後に脳を摘出し切片を作成。ACNU注入局所での色素漏出は7-12日の間のみ認められ、この時期に脳血液関門が一時的に破綻していることが判明した。この発見を受けてまず全身化学療法をこの時期に併用することにより、より強い抗腫瘍効果が得られると過程してACNUのCED投与とドキソルビシンリポソームの尾静脈投与を併用する抗腫瘍効果を検討した。ラット脳腫瘍モデルを用いた研究で、腫瘍内のACNUを投与した部位にドキソルビシンがより強く漏出していることが判明し、さらにこの併用により腫瘍モデルの生存が延長することが示された(論文発表準備中)。この一時的な脳血液関門の破綻には薬剤分布範囲に誘発される炎症が関与していると考えられ、現在局所への炎症細胞の浸潤、局所でのサイトカイン産生を研究おり、この機序解明により有効な抗腫瘍免疫へつなげることができると考えられる。さらに局所で免疫誘導を図るタンパクとしてOX40 ligandに注目している。本学呼吸器内科ではこのOX40 ligand発現アデノウイルスベクターを用いた肺癌の免疫遺伝子治療の研究がなされており(Cancer Res 64 : 3281-3287, 2004)、同グループよりベクターの供給を受けた。OX40 ligand発現アデノウイルスベクターを脳腫瘍内へ直接CED法を用いて投与しその抗腫瘍効果を研究、さらにCED法によるACNU脳腫瘍内投与との併用でさらに有効な免疫治療を目指す研究を進めている。
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