平成23年度は前年度に引き続き、ハイパースペクトルカメラおよび全波長光照射用ハロゲンランプ光源などを用いた、術中脳表撮影測定システムの構築を試みた。術中脳機能マッピングは、これまでは主に脳表に電極を置いての体性感覚誘発電位測定や脳表電気刺激によって行われており、手術中の限られた時間内には限られた領域のマッピングしか行えなかった。脳活動によっておこる血流変化を生体信号の変化としてとらえられれば、術野全体の脳機能マッピングを短時間にスクリーニング的に行えるので、手術時間が短縮されるため患者への負担が軽減するとともに、マッピングの正確性が増すと考えられる。生体からの信号を感知できる様な条件を得るための実験を行ったが、反応は微弱であり、生体がもともと持っている信号のゆらぎのなかから適切な反応を抽出するための撮影条件設定および信号の統計処理が困難であった。そのため、次に赤外線カメラを用いたシステムの構築を試みた。赤外線カメラは温度変化をとらえることができるため、脳血流変化に伴う脳表温度変化を検知することで、脳賦活部位を同定出来るのではないかと考えた。しかしながら、ハイパースペクトルカメラと同様に、有効な測定および信号抽出を行うこどが困難であった。理由としては、脳表温度変化が微弱であり、生体信号のゆらぎや外気温変化が大きいため、統計処理を行っても目的とする脳賦活による脳表温度変化が埋もれてしまったことが考えられた。
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