細胞修復や動脈硬化に関連するlectin-like oxidized low density lipoprotein receptor 1(LOX1)の発現と脳虚血との関連を明らかにすることを目的とし研究に従事した。本年度は脳虚血関連領域におけるLOX1の発現を明らかにすることを計画した。ラット脳虚血モデルを用いた解析では顕著な発現増加が確認されなかったため、脳虚血の原因となりうる頚動脈での発現を解析する方向へ変換し脳虚血との関連を調べた、頚動脈プラークモデルを用いた。頚動脈プラークはラットの全身麻酔下にバルーンを頚動脈分岐まで誘導し、バルーンの拡大後に機械的に頚動脈内膜の損傷を加えて作成した。頚動脈プラークにおいてはLOX1の顕著な発現が侵襲7日目から確認された。タンパク分解酵素のMatrix metalloproteinaseの発現も頚動脈プラークにおいて確認され、LOX1の発現との局在の一致が確認された。LOX1お呼びMatrixmetallprotainaseの発現を免疫組織化学とWestern lot法にて解析を行ったところ、肥厚した内膜を中心に中膜レベルまで発現が観察され、発現のピークは侵襲7日目に観察された。頚動脈プラークにおけるLOX1を標的としリポソームによる選択的薬物投与を行うべく、リポソームをLOX1抗体で標識化しリポソーム自体を蛍光色素DiIで標識化したリポソーム複合体を作成し同モデルへの投与を侵襲3日目に行い、7日目に内膜肥厚レベルを観察した。蛍光顕微鏡にて組織学的に評価を行ったところ、抗体修飾リポソームにおいてのみ顕著なDiIの発現が肥厚した内膜及び中膜に観察され、リポソームの選択的な蓄積が確認された。本研究の結果から、脳虚血の原因となりうる頚動脈プラークにおいてLOX1を標的とした薬物投与の可能性が示唆された。徐放性のあるリポソーム製剤の選択的薬物投与の可能性を示唆する意義深い研究内容であり、新たな脳梗塞予防治療への応用が期待される点では重要性が高いものと考えられる。
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