研究概要 |
2007年、京都大学山中伸弥教授らの研究グループによりiPS細胞の開発に成功し、マウスiPS細胞の世界的な提供が開始された。しかし、iPS細胞の腫瘍化や、遺伝子導入の必要性などにつき疑問が残る状態が続いている。我々も、iPS細胞を、自殺遺伝子を導入し、悪性神経膠腫治療に発展させる全段階の実験として、まずiPS細胞の移動能(腫瘍への指向性)を検証することとした。第一として、vitroの実験を行った。各種glioma cell line(マウス:GL261、ラット:C6、ヒト:A172, T98G, YKG1, U87)のcondition medium(腫瘍細胞を培養していたmedium)を用い、移動能の判定を行った。どのcondition mediumでもflesh mediumと比較して有意に移動能は上昇していた。次に、間葉系幹細胞や神経幹細胞を用いた移動能を検証する実験系にてよく用いられているgrowth factorを使用し、同様の実験を行った。具体的にはVEGF(vascular endotherial growth factor)、PDGF-BB(platelet-derived growth factor-BB)、SDF-1α (stromal cell-derived factor-1α)、SCF (stem cell factor)を使用し、iPS細胞の指向性を検証したところ、間葉系幹細胞や神経幹細胞と同様に、各種growth factorへの指向性を認めた。さらに、iPS細胞にVEGF、PDGF-BB、SDF-1α、SCFに対するreceptor、つまり各々に対しVEGFR2(vascular endotherial growth factor receptor2)、ICAM1(intercellular adhesion moleculel)、CXCR4(CXC chemokine receptor4)、c-Kitが発現しているかどうかをRT-PCRにて検証した。iPS細胞では繊維芽細胞と比較して、各receptorの発現の上昇を認めた。続いて腫瘍細胞側にVEGF、PDGF-BB、SDF-1α、SCFの発現が認められることをRT-PCR検証することにより、iPS細胞の腫瘍細胞への指向性が認められたということを結論付けたいと考える。次のstepとして、vivoの実験になるが、ラットあるいはマウスを用い、脳腫瘍モデルを作成し、対側脳へiPS細胞を移植し、その移動能を検証したいと考える
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