研究概要 |
本研究ではマウス脳にマウスグリオーマ細胞株を移植してWT1免疫療法を施行し、テモゾロミド(TMZ)単独や併用療法との生存率の違いや、腫瘍組織内での免疫応答の違いなどを検討した。今後は安定的に担脳腫瘍マウスモデルを安定的に作り出せるよう、実験手法の微調整を行う予定である。 次にTMZが投与されている脳腫瘍患者の抗腫瘍免疫反応を検証すべく、22名の患者より採血を行い、TMZ投与前、6週間投与後の変化を検討した。その結果、TMZ投与により、リンパ球数の有意な低下、制御性T細胞(Treg)の割合の有意な増加を認めた。しかし、WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)、WT1特異的CTL中の4分画(naive, central memory, effector memory, effector)、ナチュラルキラー細胞やナチュラルキラーT細胞の割合に変化を認めなかった。これは、TMZを使用しても、WT1免疫療法における抗腫瘍効果の中心となるWT1特異的CTLが保たれることを示しており、WT1免疫療法をTMZと併用する場合に効果が見込めることを示す極めて重要な情報である。この結果をもとに、近々、初発悪性グリオーマ患者に対して、TMZとWT1療法の併用療法を第1相臨床試験として開始する予定である。 次にWT1免疫療法が施行された前後で手術が行われた患者から脳腫瘍組織を採取し、病理組織学的にWT1免疫療法における脳腫瘍内免疫反応を検討した。現時点で9名の検体が得られ、その結果、CD3陽性T細胞、CD8陽性T細胞の浸潤がWT1免疫療法後に増加しているが、WT1発現は変化がないことが示された。これは、WT1療法を行うことで、実際にCTLが脳腫瘍内に浸潤し脳腫瘍を攻撃していることを示しており、また、その攻撃目標となるWT1の発現が保たれているので、その後も攻撃し続けることができるということを示す極めて重要な情報である。
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